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提供:日経BP知財Awareness

知財実務者は変化や情報氾濫に惑ってはいけない
弁護士・末吉 亙氏に聞く(中)
弁護士・末吉亙氏
[2004/10/21]

 「知財立国」に向けた日本国内における知財分野の現状を概観すると,一定の制度整備が進んだ一方で,今後は「ソフトウェア=人材」の開発と育成が新たな課題として浮かび上がっている。
 日本弁護士連合会の知的財産政策推進本部事務局次長であり,知的財産検定の検定委員を務める弁護士の末吉 亙氏に,今後注目すべき知財界の動向と人材育成のあり方を聞いた。
(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

現在の知財界を概観して,どのような課題が挙げられるか。
 この数年間に知的財産への社会的関心が急速に高まったこともあり,実務現場ではめまぐるしく周辺の状況が変化した。大規模な法律改正や新たな注目判例も相次いだ。
 こうした変化に伴って,今や膨大な量の知財に関する情報が氾濫していると感じている。この傾向は今後も続くだろう。現場で知財に関わる実務者にとって大切なことは,相次ぐ変化や溢れんばかりの情報に惑わされずに,自分が就く業務の現在位置と目標をしっかりと見定めることだ。企業,大学の知的財産本部,教育機関など場面によって課題はさまざまに見えるが,その本質は共通だと考える。
最近の企業の姿勢について,どのような傾向を感じられるか。
 弁護士業務を通じていえることは,知財に関する紛争を予防しようという姿勢が企業において非常に強まっていることだ。問題が発生する恐れがある場合,早期に弁護士など専門家に相談する企業が大幅に増えている。こうした企業は,一般的な訴訟動向にも鋭敏で,弁護士とディスカッションの場を設けて事例を検討することもある。こうした対応は,知財に関する社内教育や情報収集の機会としても有益だ。
 人材育成に向けた企業の姿勢にも変化が見られる。従来は「中央集権型」の人材育成が主流で,企業は本社や本部内の知財専門部署を中心にトップダウン方式で人材育成を実施するパターンが多かった。最近は,並行して企業内の各部局やセクションを対象に部署単位で人材育成を進める「分権型」が増えている。背景には,企業における知財の位置付けが変化したことがある。限定された一部の部署,社員の課題として知財をとらえるのではなく,企業全体に関わる問題として知財を考え始めた表れといえる。
従来,知的財産と関係が薄かった業種でも知財人材へのニーズが高まっているようだが。
 業種,業態,企業規模に関係なく,知財人材の育成と確保が盛んになっている。例えば金融業界の場合,ファイナンスの手法として知財が注目されつつある。著作権などを基にしたファンド(基金),知財権を担保にした融資,証券化,信託財産化など多様なスキームが登場する中で,新たに基本的な理解と実務能力を兼ね備えた知財人材が必要とされている。このように,知財が避けて通れない事業領域になりつつある企業は決して少なくない。