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知的財産検定受検対策


【問題6】
 コンピュータソフト開発のX社は,これまでは社内で行っていたソフトウェアのプログラミングの一部を他社に外注することとしたため,外注先への依頼に必要な契約書類のひな型を整備したいと考えている。X社は開発したソフトウェアを多くの顧客に対してカスタマイズも行いながら販売するため,ソフトウェアのプログラム著作権をおさえておくことが必須になる。
 外注先をY社とする場合に,以下のうち誤った考え方の組合せはどれか。


[1]  X社が著作権者であることを明らかにするためには,Y社の行ったソフトウェアのプログラミングはX社からの依頼に基づくものであり,資金はX社が負担していることを明らかにしておくことが必要である。従って,発注書や納品書は確実に保管しておく。
[2]  ソフトウェアのプログラミングを行ったY社には著作権と併せて,著作者人格権が発生する。著作者人格権が留保されているとX社がカスタマイズを行う際に問題が生じる恐れがあるので,必ず著作者人格権の譲渡を受けておくべきである。
[3]  X社は,開発したソフトウェアを顧客に販売できるように,Y社から著作権の譲渡を受けておくことが必要である。X社からソフトウェアを購入する顧客に対しては,顧客が購入したソフトウェアを自由に利用できるようにすることが必要なので,X社にとっても著作権は全て顧客に対して譲渡することが好ましい。
 1と2        1と3        2と3        1と2と3

【解答】 エ


【解説】
 本問では,ソフトウェア関連企業にとっては非常に重要なプログラム著作権についての基本的な考え方について整理しておきましょう。
 著作権は,著作物の創作により発生し,登録などの方式的要件を必要としません(著作権法第17条第2項,第51条第1項)。著作権者となるのは著作物を創作した本人であって,指揮監督の権限や資金負担は著作権の発生自体には関係しません。従って,本問のようにソフトウェアのプログラミングを外注するケースにおいては,著作権はプログラミングを行ったY社に発生するため,X社としては著作権の譲渡を受けておかなければならないことに留意が必要です。
 また,著作物を創作すると,著作者には著作者人格権が発生することにも留意が必要です(著作権法第17条第1項,第18条他)。著作者人格権は,著作物への著作者名の表示や著作物の改変の制限を求めることができる権利なので,本問のようなケースでは,Y社が社名表示を要求したり,カスタマイズに制限を要求したりすることが理論上は可能ということになってしまいます。著作者人格権は一身専属権で譲渡ができないため(著作権法第59条),何らかの手当てを行っておくべきと考えられます。
 開発したソフトウェアを販売する場合は,著作権も含めてソフトウェアを譲渡する方式と,ソフトウェアをライセンスする方式があります。開発元であるX社の立場で考えた場合,著作権を譲渡した方が高額な対価を請求できる可能性がありますが,一方で著作権を全て譲渡してしまうと同一のソフトウェアを他の販売先に販売できなくなるほか,そのソフトウェアの中に含まれている汎用的なモジュール(特定の機能を果すソフトウェアの一かたまり)を他のソフトウェア開発に利用できなくなることにも留意が必要です。

 それでは,各々の選択肢について検討してみましょう。

[1] 先に説明したとおり,指揮監督や資金負担を行ったことによって,著作権者となるわけではありません。X社が著作権者となるためには著作権の譲渡を受けることが必要であり,単に発注書や納品書を保管しておくだけで著作権者であることを立証できることにはなりません。発注書や納品書において著作権の譲渡を明記することも可能ですが,選択肢には,「・・・著作権者であることを明らかにするためには,・・・依頼に基づくものであり,資金はX社が負担していることを明らかにしておくことが必要・・・」という考え方は正確ではありませんので,本肢は誤りです。勿論,ビジネス上の問題としては,発注書や納品書は確実に保管しておくことは重要です。

[2] Y社に著作者人格権が発生することは,選択肢にあるとおりです。しかしながら,著作者人格権は一身専属権であって譲渡することができないので,著作物の改変の包括的な許諾を受けておくなど,契約上の何らかの工夫が必要です。従って,本肢は誤りとなります。

[3] 販売先の顧客からすると,著作権の譲渡を受けておくに越したことはありません。しかしながら,ソフトウェアの開発販売を行うX社にとって,開発したソフトウェアの著作権を全て譲渡してしまうと,同一のソフトウェアを他の販売先に販売できなくなる,そのソフトウェアの中に含まれている汎用モジュールを他のソフトウェア開発に利用できなくなる,といった非常に大きな問題が発生してしまいます。従って,X社にとっては,ソフトウェアをライセンスの形態で販売する,汎用モジュールの著作権を留保してカスタマイズ部分のみの著作権を譲渡する,といった工夫を行うべきでしょう。従って,本肢は誤りとなります。

 以上より,1,2,3のいずれも誤りであるため,正解はエとなります。



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